以前技術書典で頒布した同名の同人誌を底本として、インプレスR&Dより「プログラマーのための本気で使えるChromebook」が出版。2022年6月24日発売予定。

商業出版はこれが初めて。

なぜ出したのか

中身の構成は同人版から大きく変えず、全体的に加筆修正をした感じ。つまり同人版を読んだ人だったら分かると思うけど、実はこの本にはあまり大したことは書いてない。 「ハイエンドChromebookでDocker中心にすると便利に開発ができるよ」って示すのがコンセプトなので、私が普段やってるChromebookを使った開発の様子がざっくり書いてあるだけのような感じになっている。しかし特定の技術にフォーカスすると「Chromebook」というテーマから離れてしまうので技術的な話はあっさりしていて、かといってChromebook特有の技術というのを豊富に使うわけではないので、結果として中身がとても充実しているという本ではなくなっている。 まあ技術同人誌らしい構成ではないかと思う。

そんな本なので、商業出版のオファーを頂いたときに受けるかどうかは迷った。けど、この本が市場に存在すること自体が「Chromebookをそんな風に使う人いるんだ」って広めることにつながって、開発に使えるようなハイエンドChromebookが市場で売れて、 ASUSやHPあたりが「日本でハイエンドChromebookをもっと出そうぜ!」という気に少しでもなってくれるなら自分自身は結構嬉しい と思ったので、商業出版を受けることにした。GoogleにもPixelbookシリーズを日本で出す気になってほしい。

なので、この本を買ってもらえるならもちろん嬉しいけど、この本が売れなくてもハイエンドChromebookを買ってくれる人が増えるほうが嬉しい。

商業版になって何が変わったのか

中身は同人版と商業版とで大きく変えるつもりは無かったけど、「大した本ではない」と言いつつももうちょっとちゃんと書きたいなあ、と思う所をいろいろと加筆修正していたら結局分量は倍くらいになった。

ARM対応

商業版での主な変更としてはARM版Chromebookへの対応がある。同人版のときはASUS C436FA(Intel Core i7)を中心に動作確認をしながら進めたけど、商業版は新たにHP x2 11(Qualcomm Snapdragon 7c)を調達し、主要なコードはIntel系でもARM系でも動作することを確認した。 あまり具体的な技術に触れていないというのもあり、ARM特有の話というのは多くはなかったと感じている。

この本は「ハイエンドChromebookでプログラミングしよう!」という本であり、 ARM系でハイエンドと言えるようなChromebookは2022年6月時点で市場に存在しない。なので、ARM版のChromebookを現時点で勧めるものではないけど、仮に近い将来ハイエンドARM版Chromebookが登場したとしても内容が通用するであろうことを確認した。

参考: https://www.helentech.net/news-22717/

なお、商業版でも引き続き「おすすめのChromebook」としてASUS C436FAを挙げている。しかしこれも2年前(2020年)の端末なので、せっかく加筆修正するなら新しい端末を推したかった。本当はHP Elite Dragonfly Chromebookあたりをおすすめしたかったけど、まだ間に合わなかった。残念。

しかしASUS C436FAをこれだけ布教しているので、そろそろASUSさんからTシャツの1枚ぐらい送られてきても良いんじゃないかと思うんだけどどうですかね。

Chromebookで本を作る方法

同人版は制作のすべての作業をChromebookで行って、その過程の解説も「Chromebookで同人誌を作る方法」として本文に盛り込んでいた。これによって 「Chromebookで技術同人誌を作るぐらいはできる」 ということをそのまま示すというコンセプトもあった。 ただし、脱稿してから物理書籍版の対応を行ったので、物理書籍特有の話は本文に含められなかった。

商業版には、同人版に含められなかった物理書籍対応についても本文に含めた。 一方で商業版での私の作業は原稿の執筆だけであり、私の担当作業は引き続きChromebookのみで行ったけど、それ以外の作業、具体的には校正やPDFなどのビルド、表紙の編集などは(たぶん)Chromebookで行ったものではない。商業出版にあたってこの辺のコンセプトがブレちゃうのはちょっと残念だったかな。仕方ないけど。

組版について、同人版ではVivliostyleを使っていたけど、商業版はRe:VIEWに変更した。いずれもOSSの組版ツールで、ChromebookのLinux開発環境でも使うことができる。Re:VIEWに変えたのは編集側の指示だったけど、私もRe:VIEWのほうが使い慣れているので特に問題はなかった。

表紙

同人版の表紙は私が適当に作った(一応Adobe Creative CloudをChromebookで使うというコンセプトがあった) それに対して、商業版は湊川あいさんにお願いして素敵なイラストがつきました!こういうことが実現するのは商業出版の強みだと思った。

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