2022年11月に発売された「ポケットモンスター スカーレット」をクリアした。

『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』公式サイト

面白かったので感想を書く。

本稿では、各タイトルを以下のように表記する。

  • 今作「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」を「SV」
  • 前作「ポケットモンスター ソード・シールド」を「剣盾」

以下、この記事にはネタバレが含まれる。


  • スカーレットバージョン
  • クワッス選択
  • つかった旅パたち
    • 序盤: プリン、ハネッコ、ヤバチャ、パモ、カルボウ
    • 中盤: ヘルガー、オトシドリ、ブロロローム、ルカリオ、ミミッキュ、ドラパルト
    • 終盤: デカヌチャン、リククラゲ、ドンファン、パルデアケンタロス、タイカイデン
  • エンディングまで約30時間

初のオープンワールドのポケモン

今作SVはシリーズ初のオープンワールドになって、360度どこへでも行けるようになった。2022年現在オープンワールドなのは別に珍しくはないけど、幅広い層が遊ぶタイトルで操作難易度などのハードルがある程度高いオープンワールドを採用するのは、挑戦的な試みだったと思う。 併せて完全シンボルエンカウント化、トレーナーとのバトルも任意となり、意図しないバトルが挟まれるという事が少なくなった。これによってテンポがとても良くなった。クリアまで30時間というのはシリーズと比べても特別に長いわけではないけど、中身が濃い体験となっている。

前作の剣盾は「チャンピオンになる」事に強くスポットを当てて、それ以外をあまり意識させないリニアなストーリー構造だった。 一方でSVは「宝探し」という抽象的な目標を与えられて、どこへ行くのも自由と言われ、各地で色々なことが起きるようになっている。SVと剣盾は対になってる気がした。

SVの見た目は「ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド」みたいにマップの中央から始まるような構造だけど、実際は全然違っていて、誘導がしっかり効いている。私が知っているオープンワールドの構造の中では「Ghost of Tsushima」に近く、マップ上の行動は自由だけど、ある程度の順番に沿ってストーリーを進めていくような形になっている。

攻略順は自由で「3つのストーリーから好きなものを攻略できる」とは言われるけど、実際には3つのストーリーは同時進行が前提になっている。 パルデア地方の西と東のふたつのルートがあって、それぞれにバランスよく3つのストーリーのチェックポイントが配置されているので、プレイヤーは基本的に「西」か「東」か、どちらかを選んで攻略していくような形になる。メインストーリーのイベントは道なりに配置されていて、最初から空を飛ぶ能力でどこへでも行けるわけではなく、割と明確な道が作られている。なので、普通に進めば道に沿って順番にストーリーが進むようになっている。

順番を無視して故意にスキップしたりはシステム上できるようになっている。ただし、オープンワールドにはよくある「進行順によって相手の強さが変わる仕組み」も無いようで、すべてのストーリーには相手のレベルによって明確な攻略順が想定されている。ひとつふたつ入れ替えたりしても問題は無いけど、順番を大きく外れると相手が強すぎor弱すぎる問題が発生し、面白さが損なわれる。 (ちなみに言うと、おなじみ終盤の強敵である四天王の攻略順も久々に固定になっていて、ここにも攻略順の自由は無い)

つまり「オープンワールド」「フリーシナリオ」と言われているものの、意外と自由が無い。 「どこへ行っても良い」と言いつつ、実際には西と東の2つしかない。「セキチクシティとヤマブキシティどっちから行ってもいい」程度の選択肢を超リッチにしたような作りになっている。

これはブレスオブザワイルドみたいな完全に自由なものを期待していた人からすると賛否ありそうだけど、個人的にはうまく作ったなと思う。オープンワールド&フリーシナリオを謳う作品の中では迷いにくいんじゃないかな。 ポケモンってちょっと攻略順を変えるだけでも新しい野生ポケモンとかジムのタイプ相性とか全然違う体験になるので、無理に選択肢を膨大に増やす必要は無くて、これくらいがちょうどいいのでは。

オープンワールド&フリーシナリオで、しっかりしたストーリーを描いた挑戦的な構成

ストーリーが薄くなりがちな問題を抱えるオープンワールド&フリーシナリオで、元々ストーリーがそんな濃密なわけではないポケモンシリーズは相性が良さそうだと思っていた。

けど、実際はなんと本作はシリーズでも結構しっかりしたストーリーが語られていくようになっている。「チャンピオンロード」「スターダストストリート」「レジェンドルート」3つのストーリーはそれぞれ進めるごとにメインキャラクターが掘り下げられていくが、そのうちペパーのレジェンドルートが主軸となって最終章に繋がっていく。 ポケモンのストーリーといえばチャンピオンになることと悪の組織との対決だけど、「チャンピオンロード」「スターダストストリート」のふたつは今作の終盤の展開においてはサブストーリー寄りの立ち位置になっている。チャンピオンのネモと悪の組織のボスであるボタンが、主人公を軸としてペパーの物語に参加し、力を合わせて最終決戦に挑む、という形になる。

「サブストーリー寄り」といっても、悪の組織の幹部5人、ジムリーダー8人、四天王、チャンピオンや謎の協力者ネルケなど、様々なキャラクターが登場し盛り上げてくれる展開は剣盾以前のシリーズのメインストーリーと比べても遜色は無い。特に悪の組織スター団については、進める毎に組織結成の理由や学園の過去が明らかになっていく構造になっていて、ストーリーが非常に凝っている。 3つのストーリーがあることで何かが薄まることはなく、今までのシリーズ作品を比較的踏襲した展開であるふたつのストーリーに「レジェンドルート」がプラスオンで乗って、体感で1.5倍くらいのボリュームになっている。

こういうところは、リニアな構造なのにストーリーが薄味だった剣盾とはまったく対称的で、個人的にはSVのほうが好み。

魅力的なキャラクターたち

SVはキャラクターに悪いやつがいない。 過去作品にはスパイスの効いた行動を取るキャラクターがいたけど、SVには全然いない。

特に、不登校・いじめというセンシティブな話題を扱っておきながら、具体的な描写は全然なかったりする。 いじめは発生した経緯や加害者や行為がほとんど語られること無く、劇中のパルデアには存在しない概念上の絶対悪として描いている。なのでキャラクターに全然ヘイトが向かない。これはよくできてるなと思った。 ゼノブレイド3の感想では「悪役が概念的な存在に留まっており、キャラとしての魅力に乏しい」と似たような点に対して正反対の意見を言った気がするけど。

そうそう、ゼノブレイドといえば。ラストダンジョンのエリアゼロでは突然ゼノブレイドみたいな雰囲気になるのもよかった。 なんか開けた草原みたいな所で、急に4人パーティになって、おしゃべりしながら旅する展開になる。ライドもできなくなって草原を仲間と一緒に駆け抜けるしかなくなる。おまけにBGMもポケモンらしからぬ、ゼノシリーズみたいなコーラス付きの音楽が流れ始める。 これで、もしボイスが付いて4人のレイドバトルが始まったなら、完全にゼノブレイドだった。ネモ・ペパー・ボタンが技の名前を叫びながらやるクッソうるさいレイドバトルとか、絶対に楽しい。

さてシリーズおなじみのポケモン博士は、近年の作品ではマンネリを打開するために意外性のある設定が追加されがちだけど、今作のオーリム(フトゥー)博士はその中でもかなり強烈な印象を残すキャラクターになっている。「博士がラスボス」というのはサン・ムーンのククイ博士と被っているけど、受ける印象はまた新鮮なものになっている。 バトルにおいても手持ち全員が新ポケモンでタイプ相性が分からず初見での撃破が難しく、あとから知ったけど全部が準伝説級の種族値(合計570または590)であり、ストーリー上のひとりのトレーナーとしてはシリーズでも最強ではないかと思う。 そしてこの博士、はっきりとは言われないけど行方不明とかではなく死亡という扱いになっている。劇中の時間内の出来事ではないとはいえ、主要人物が「死んだ」のはシリーズで初めてだと思う。 プレイ中は、どうせ博士は時空のはざまみたいな所に飛ばされて行方不明なだけで、最後に帰ってきてペパーと和解するんだろうと思ってたから、死亡扱いで幕を閉じるのは結構衝撃だった。

クラベル校長は想像以上に良いやつだった。終盤に戦闘はあるけど基本的には裏方に徹しているのは、生徒の自主性を重んじる指導方針としても優秀に見えるし、JRPGの脇役として主人公たちに華を持たせている。剣盾のダンデは逆で、「大人の問題は大人が解決する」とか言って主人公の先に行ってしまう、最強のチャンピオンというキャラはハマっていてもRPGとしての面白さを損なっていたから、ここもクラベル校長は対になっているように感じた。 事前の噂で「校長が黒幕」だとか散々言われてたのに対して、実際には斜め上のバレバレの変装をしたり、突然「実は私がスター団のボスで、なんかこういい感じにやっていたのです」とか適当すぎる嘘をついて決闘を挑んだりしてくる。「黒幕だと疑われやすい立場」を利用して好き放題やってるの、我々は開発チームの手のひらで転がされてたんだなって思った。ネルケかクラベルかで口調を変えるけど、どうでも良くなってきたのかだんだんキャラがブレてくる不器用さも面白い。こういう微妙な表現はポケモンシリーズ結構うまい所があると思っている。

他にも、ペパーは実質主人公。ネモは戦闘狂。ジムリーダーやスター団ボスにも、出番が少なくてもキャラが立つようなシンプルで個性的な人が多い。 トゲのあるキャラもいなくなってみんな良いやつだった。

そして伝説のポケモンであるコライドン・ミライドンは、かつてないほど愛着が湧く。これまで伝説のポケモンは超常的な存在として描かれていたのに対して、コライドン・ミライドンはサンドイッチが好きな不思議な相棒としてずっと旅を共にすることになる。 今まで伝説のポケモンというのは基本的に世界に1匹しかいなかったのに対して、本作では普通に2匹いて、縄張り争いに負けたという情けない設定を持っている。旅の途中ではずっとバトルができないけど、最終決戦で覚醒するという展開はベタだけど印象深い。

主要キャラクターには専用バトル曲が割り当てられていて、結果かなり豪華になっている。 通常戦闘、テラレイド、ジムリーダー、ヌシ、スター団ボス、四天王、チャンピオン、ネモ×2曲、ペパー、ネルケ、カシオペア、エリアゼロ通常戦闘、オーリムAI、楽園守護プログラム、学校最強大会、準伝説。

ネモ戦が好きかなあ。

ちなみにテラレイドバトル、エリアゼロ、オーリムAI戦は同じモチーフが使われてる。

不具合など

クリアまでの30時間でフリーズ1回、エラー落ち2回。オートセーブあるからこの程度の頻度なら十分許せるけど、あまり安定しているとは言えなかった。

私はゲームのフレームレートは30で十分だと思ってるけど、このゲームは30も全然安定しない。快適に動かすために、移動中はポケモンの群れをカメラに映さないようにするレベル。

他にもボックスが使いにくい。ページ送りのロードが遅いのは厳しく、ボックス整理がやりづらい。これは対戦をやり込んでいく上で面倒だった。

先に述べた通り戦闘BGMは豪華だけど、四天王とチャンピオンのBGMが展開しないバクがあって残念だった。 実際に踏んでしまって、なんかやけに地味なBGMだなと思っていたので、これらは他の人のプレイを見ていて初めて気がついた。現在はなお12月頭のアップデートにて修正済。

回復アイテム禁止の旅

私はJRPGが結構好きなので、ポケモンのメインストーリーはちょっと普通にやると簡単すぎて退屈になってしまう。 なので、いつも「回復アイテム禁止」という条件を加えてやっている。

こうすると一匹でゴリ押しみたいな事がしにくくなって、パーティをバランスよく組んで使いこなす必要が出てくる。ゲーム性が上がるし、旅パに愛着もわくし、詰まったら色々なパーティを試行錯誤する必要が出てくるので様々なポケモンを使える。

ネモ(2回目、テーブルシティ突入直前)

初の全滅。Lv.8くらいのパモのテラスタルでんきショックで6タテされた。たぶんウパーがいれば勝てた。

なおここでのネモは、負けてもストーリーが進んでしまい再戦できなかった。他にもそういう負けたけど進んでしまった戦闘がいくつかあった気がする。

あくスター団(スターダストストリート1個目)

序盤であくタイプってキツくないか。 スターモービル戦も初だったので、電磁波とか絡め手を色々試しつつもなかなか倒せなくて苦戦した。

結局、レイドでフェアリーテラスタルヤバチャを捕まえて、あく技を耐えることにした。(フェアリー技は無かった)

エスパージム(チャンピオンロード6個目)

ジム戦は総じて楽勝だったけど、エスパージムは唯一苦戦した。 ヘルガーとオトシドリをパーティに入れて突破。

ペパー(レジェンドルート最終)

レジェンドルートを最初に攻略したので、Lv.30後半でLv.50あたりを相手にすることになって厳しかった。ウェーニバルでうまく積めば行ける。

ネルケ(スターダストストリート最終)

マスカーニャがとても強かった。

四天王

毎度おなじみ回復アイテム縛りにおける難関。 SVはチャンピオン前に休憩が入るため4連戦なのでサンムーン以前よりは楽だけど、それでも剣盾よりかは相当難しい。

勝てる気がしなかったので、剣舞ミミッキュに竜舞残飯ドラパルトとかいう大人気ない戦法で突破。本当は新ポケモンをメインで使いたかったけど、ちょっといい戦法が思いつかなかった。

オーリムAI(1回目)

タイプ相性も能力も何もわからんポケモンだらけの初見殺し。 リククラゲがれいとうパンチで飛ばされたり役割破壊技も揃っている。

一度負けて図鑑でタイプ相性を調べて、デカヌチャンやタイカイデンで荒したあとウェーニバルでうまく積めば行けた。古代ボーマンダに飛行タイプがあったら厳しかったかもしれない。

というわけで、無事にクリアできた。 野生のエクスレッグやカイリューにボコボコにされたのも含めて、数十回は全滅したかな。 今作も回復アイテム禁止というのはちょうどいい程々のバランスの旅だった。

プリン

ところで私の好きなポケモンはプリン。

プリンは今作SVでも様々な場所で活躍していて嬉しかった。

ゲーム終盤で突然あたらしいプリンが出てきて目玉が飛び出た。 まさか最後の最後にそんなポケモンを隠してたなんて。

プリンに新しい古代の姿が追加されて、それも合計種族値270→570と倍以上の準伝説レベルになる超強化。強制戦闘イベントがあって、ラスボスのパーティにも入るとかいう高待遇。いったい誰がこんな事態を予想できたか。

まとめ

SVは面白かった。不具合などでの減点も大きいけど、オープンワールドの上に魅力あるキャラクターで面白いストーリーを展開させていて、ポケモンはキャラゲーや対戦ツールなどではなく 最高のJRPGを作ろう という方向性を感じることができた。 個人的にはシリーズ最高傑作だと思った。

今はランクマッチを始めている。これについてもまたブログを書ければと思う。