ゼノブレイド3をクリアした。面白かった。この記事に感想を書きなぐっていく。 この記事はネタバレを含むので、もし攻略途中の方はインターネットをやめて早くアイオニオンに戻りましょう。

この記事では

  • 「ゼノブレイド(Definitive Edition)」を「1」
  • 「ゼノブレイド2」を「2」

と表記する。

これはDALL·E 2というAIにゼノブレイドのファンアート(草原に赤い剣が突き刺さっている絵)を描かせようとした何かであり、ゼノブレイドとは全く関係が無い。冒頭の割れた大地に立つ巨人のカバー画像も同様である。


それではここからネタバレ有りで。

クリアまでのプレイ時間は62時間57分。レベル72。だいたい敵のレベルと同等~-5ぐらいの範囲で進めた。 クリア前に開放できるヒーローはたぶん全部開放したけど、それ以外のノーマルクエストはやったりやらなかったり半分くらいかな。

完成度の高い戦闘システム

戦闘システムはシリーズ最高傑作だと断言できる。基本ゼノブレイドシリーズで同じものをベースにしているけど、「3」は特に完成度が高かった。 今作はキャラごとに「アタッカー」「ディフェンダー」「ヒーラー」と戦闘中の役割がハッキリ明示されるようになって、こういうRPGに慣れていない人にも分かりやすく、かつ構成の戦略性に富んだものになったと思う。 戦闘は6人パーティであり仲間全員が参加できるようになって、ヒーローと呼ばれるサブキャラクターが1人追加でき、基本7人で冒険することになる。さらに特定の場面ではヒーロー以外にも主人公側に友好的な勢力が何人か加勢し、最大10人ぐらいで戦うことになる。 「みんなで戦っている」という感じがとても強くなったのが良かったと思う。やっぱりメインの仲間6人を全員パーティに入れて戦えるというのはうれしかった。 ヒーローはたくさんいる中から1人選ばなくちゃいけなくて、メインの仲間を削ってヒーローを増やすようなことはできないけど。

正直「2」のブレイドコンボ・ドライバーコンボを絡めた戦闘システムは最後までよく分からなかったけど、「3」はそこまで複雑に感じなかった。融合、コンボ、インタリンク、チェインアタックなど色々な要素があるけど、どれも適当に使っていってもガンガン戦えるのでたのしい。チュートリアルも簡潔だけどちゃんと存在していて、訓練であとから学び直すこともできるのでよくわからなかったら復習できる。たぶん「2」を相当反省したんだと思う。

また7人パーティで1人を操作するんだけど、残り6人のAI自動操作が結構優秀でいろいろいい感じにやってくれるので、自分は適当にやっていても行ける。「1」「2」同様にAIが自動でコンボをちゃんとつなげてくれるのはもちろん、ディフェンダーを二手に分けてそれぞれにバフ撒いてくれたり、ピンチになったらインタリンクで乗り切ったりしてくれる。 チェインアタックだけは自動で行われないのでその使い所さえ間違えなけば戦闘はなんとかなる。ちなみにチェインアタック中HP0にならないという仕様は本作でも健在。強敵がなんか叫んだあとに使うと攻撃を耐えられる。アタッカー操作時でも防御手段にチェインアタックとインタリンクがあって、さらにマスターアーツを付けて回避できるようにしたりもできる。対抗手段が多いのは面白かった。

さらに、戦闘中でも自由に操作キャラクターを切り替えられるので、もっと複雑な戦闘システムを楽しみたいという場合は複数人を操作しながら戦闘も一応できる気がする。考えることが一気に増えるのでめちゃくちゃ難しそうだけど。

バトルとイベントムービーがシームレスに繋がるようになっており、さらに一部の戦闘(主にラスボス戦)はバトル中にもムービーが挟まる。このムービーがバトルと同時にリアルタイム処理されているらしく、巨大な鉄巨神がオリジンと戦っているムービーの中、豆粒みたいな主人公たちの戦闘エリアのバフが表示されたままになっている。巨大な鉄巨神のムービーをバトルと両方リアルタイム処理している証拠であり技術力の高さを感じたけど、バグっぽいので修正されそうな気もする。

ヒーローシステムがどこを取っても面白い

ゼノブレイド3は「ヒーロー」という7人目の仲間が物語にも絡んでくるサブキャラクターの枠になっている。これが「Hero(英雄)」という字面とは裏腹に、実際は中間管理職ばかりで構成されている。見ててときどき胃が痛くなる。 ふつうファンタジーRPGの主要人物って国の王子とか百戦錬磨の英雄とかが多いと思うし、それは過去のゼノブレイドシリーズも例外ではなかった。けどゼノブレイド3は、敵である「執政官」というクソ上司のもとで働かされてる「軍務長」という気の毒な中間管理職ばかりが出てくる。

それも大企業型の縦割り組織が出てきたり、評価制度を見直すことで高いパフォーマンスを出す新興勢力とか、マネージャが現場(戦闘)にしか興味なくてマネジメント放棄して荒れてる軍とか、とにかくいろんな組織の中間管理職が出てくる。これ全部モデルになった組織がありそう。面白いけど、なんかゲームの中でまで現実的な組織についての話を見たくないというか、心をちくちくされている気分になる。やっぱりJRPGの主要登場人物は伝説の勇者とか王子様とか非現実的な人が良いよ。

このヒーローシステムは「2」のレアブレイド集めに相当する要素だと思う。メインストーリー上で集められるだけでも最低限の量が揃い、探索やサブクエストを進めるとどんどん増えていくという点までは「2」のブレイドと同じ。ただ「2」のブレイド集めはなぜかガチャをやらされたのに対し、「3」のヒーロー集めはちゃんとした探索とクエストを通して仲間になるようになっている。それも多くのヒーローはコロニーの軍務長という立場であり、ヒーローを仲間に加えるのは「コロニーを悪の執政官から解放する」というサイドクエストの中でもリッチな内容になっている。コロニーを開放すると軍務長がヒーローとして加入するだけでなく、コロニーと友好関係になってそこから大量のサブクエストやキズナグラム・コレペディアなどが解放され、メリットがかなり大きい。当然仲間が1人増えるので戦力が強化されるという点もある。 またヒーローを連れているといろいろなところで追加の短い会話が発生して、結構面白いものが良い。クエストにもならないし過去作の「キズナトーク」ほどの内容でもなく、どの組み合わせがどこで喋るのかは全然分からないんだけど、適当に歩いていると結構喋ってくれる。カムナビを連れてシティを歩き回るとたのしい。

サブクエストのヒーロー集めが、システム的にも戦力的にもストーリーも全部面白いのは、とても良かったと思う。同じシステムで次回作もやって欲しいって思った。

ストーリーは面白かったが、長い割にボリュームを感じない

クリアまで60時間もかかったものの、メインストーリーのボリュームは意外にもちょっと少なめに感じた。特に第5話以降は急展開で一気に話を畳みにかかる割に、実際やることは船の材料集めや超長いダンジョンなど水増しのような展開があるので、体感的には密度が薄く感じた。 他にも序盤の幼少期の回想ムービーとかも冗長に感じた。あれが無いと終盤まで敵対するヨラン(ジェイ)に思い入れがしにくいから力を入れたように見えるけど。 また「終の剣」「消滅現象」といった世界設定に関わりそうな重要そうな要素も、特に取り上げられないまま終わってしまったのは残念だった。もしかしたらどこかで説明があったのを見落としてたりサブクエストやDLCで補完されるものかもしれないけど、この辺りはメインストーリーでガッツリ掘り下げて欲しかった。

ただ、ボリュームが薄く感じることと実際に語られるストーリーの中身の濃さはまったく別の話。ゼノブレイドシリーズらしい先の読めない展開や熱いムービーシーンは健在で、面白かった。「水増しや冗長さも感じる時があったけど中身は濃い」という面は「2」のDLC「黄金の国イーラ」に近い印象。 特に第5話終盤の収容所脱出からのミオ処刑イベントは超長いカットシーンをはさみながら合計6連戦ぐらいのボス戦があり、明らかにここを山場として作られている。主人公のノアに対する印象も大きく変わり、執政官の謎も明かされ、新しいバトル能力も解放される。 ボス戦でも苦戦して試行錯誤してたので、ここだけで映画一本分ぐらいのボリュームを感じた。エンディングより盛り上がった。初代プレステだったらここで間違いなく「ディスクを交換してください」が出る。 「ミオの命があと3ヶ月しかない」という設定はエンディングまで引っ張って感動的な展開のために使われるものだと思っていたので、ここで解消しちゃうのもびっくりした。

そして、この超シリアスな最大の山場を超えた直後に出てくる謎の選択肢がこれ。ヒロインのミオは色々あっての髪が伸びてしまったのをとても気にしており、ロングかショートか選ぶというイベントが発生する。 なんなんだよこのゲームは!こんなの選択させるのかよ! どうでもいいだろ!でもめちゃくちゃ大事!

ここで5分ぐらい迷った。Ghost of Tsushimaのラストぐらい悩んだ。

そして実はオプションでいつでも自由に変更できるので悩んだのは無駄だったという。なんなんだよこのゲームは!

さらにイベントシアターでは「ショート」「ロング」の他に「ランダム」が設定できる。なんだよヒロインの髪型をランダムに変えれるゲームって!人の髪をなんだと思っているんだ!これがメビウスの所業か!

総じてストーリーは面白かった。不満な点も無くはないけど、少なくとも「大剣の突き立つ大地に行ったけど何もありませんでした!This story is never ending...」みたいなことは無かったので安心した。 また「2」のような深夜アニメみたいなノリや露骨に露出度の高い女性キャラクターもいなくなっていた。個人的には良かったけど、これは好みが分かれそう。まあ第1話でいきなり男女混浴の入浴シーンとか飛ばしてくるのは不安になったけど、単に「生殖して子孫を残す概念が無いので性欲もない」という表現で、最後の最後にメビウス・ゼットの枷が外れることでエンディングで初めて恋愛感情が芽生えるということに繋がってたんだと思う。

DLCはどうなるんだろう。ノアとミオが結婚した時代の過去の話か、エンディング後に仲間との再会を目指す未来の話か、どっちかだと思っているけど、どっちでも泣いてしまいそうだなあ。 でも「2」と同様に「フードを被った謎の人物」の詳細が明かされていないので、今回のDLCもそれ絡みになりそうな気がする。

エンディングとシリーズ作品との関わり

ゼノブレイド3は、「ゼノブレイド1」「ゼノブレイド2」を遊んでいなくても楽しめるように作られていると思う。それぞれシリーズをイメージさせる要素は出てくるけど、継続して登場するキャラクターはごくわずかで、それも過去についての話はほとんど「3」の話の本筋とは関係ない。世界がふたつ存在していたってだけ。シュルクやレックス達が何をしてきたか、モナドや天の聖杯の秘密などといった、「1」「2」のメインストーリーは「3」とは全く関係してこない。 「1」のDefinitive Editionには「つながる未来」という追加ストーリーがあって、「1」から何らかの続編に関係することを示唆していたけど、実際に「3」を最後までやってみると「つながる未来」にも直接的な関係は無かった。というか「つながる未来」の話が必要なのは「1」よりも「2」だったような気はする。

こういう「3」から始めても大丈夫という点は、スタッフも気をつけながら開発したんじゃないかな~と思っていた。それはだいたいうまく行っていると感じた。 けど、肝心のエンディングがちょっと良くないのでは?と思ってしまった。

ゼノブレイド3は「ケヴェス」と「アグヌス」という2つの国家が戦争しているという設定。発売前の事前情報からも簡単に読み取れることが、「ケヴェス」はなんとなーく「ゼノブレイド1」の機神界っぽい雰囲気で、対する「アグヌス」は「ゼノブレイド2」の世界であるアルストっぽい雰囲気を含んでいる。 この点から「3」の世界であるアイオニオンは「1」「2」の世界がなんかの理由で合体したような所である、ということまでは、ゲームを始める前でも公式サイト等に目を通せば推測できるようになっている。 (個人的には、前情報でここまで明かすということはミスリードだと思っていたけど、そんなことはなかった)

ただ、ケヴェス・アグヌスふたつの国のルーツがそれぞれ「1」「2」の別々の世界にあるという事実は、劇中最後まではっきりとは触れられず暗黙の了解みたいになっている。ふたつの世界があったこと自体は終盤にアグヌスの女王から語られるけど、ふたつの世界についての詳細な説明は無く、あっさりしている。 ふたつの世界が分かれているといっても、ゼノブレイド3自体の舞台はアイオニオンという新しいひとつの世界だけなので、基本的には過去の世界は意識しなくても問題無いストーリー構成になっている。そのためか過去のふたつの世界については最後までほとんど触れられない。

過去のふたつの世界がメインストーリーに絡まない限り過去の世界は意識しなくても良いんだけど、その結果、最後の最後エンディングに繋がらなくなってしまう。

このゲームの終盤は「メビウス・ゼットを倒してオリジンを開放すると世界がどうなってしまうか分からない。それでも前に進む」という話で、それに対する葛藤も最後まである。たぶん平和な世界になるんだろうなと想像できる余地はあるけど、ラスボス倒しちゃった後でさえ「まだ止めるなら間に合う」とか言われる程度には引っ張るテーマになっている。 それがエンディングになるといきなり「世界はケヴェスとアグヌスに分かれて、それぞれ"元"に戻る。なので6人の仲間も3人ずつとなって別れる」というようなことが前提として話が進み始める。これはずいぶん唐突だと思った。6人の仲間はそれぞれケヴェスとアグヌスという別々の国の人であるが、当然アイオニオンというひとつの世界に属する人であり、「過去作の機神界とアルストという別々の世界から来た人」だという描写は一切無い。ノアたちはアイオニオンで"ゆりかご"から生まれて10年経っていない反面、アイオニオンは数百年ぐらいは続いている(という描画がどこかにあったはず)。"ゆりかご"の起源にまつわる設定を見落としている可能性はあるけど、ノアたちは同じアイオニオンの世界の人だという認識に違和感は無いと思う。 でもエンディングでは急に、それぞれが3人ずつに分かれて別々の世界に"帰る"かのような演出が唐突に始まる。消滅でも存続でもなく、世界がふたつに分かれて続いていくような話になる。ここの繋ぎが雑だと思って、肝心のエンディングでちょっと冷めてしまった。

もちろん私は「1」「2」をやっているのでそれぞれの国のルーツが別の世界にあることは容易に推測できるんだけど、なんかそういう話じゃないんだよなあ。なんだろう。 第5話が良すぎてエンディングの期待が高すぎたのかな。第5話だって入れ替わり作戦とかそんな上手く行かないやろというツッコミどころもあったと思うけど十分に盛り上がったのはなにが違ったんだろう。


エンディング以外に「1」「2」との繋がりは思ったほど多くなく、特にクラウスやトリニティプロセッサーなどゼノブレイド世界を創った存在への言及が無いのは意外だった。(存在をほのめかすようなセリフはある) 「分かれた世界がひとつになる」というテーマから「ゲート(ゾハル)」が出てきてゼノギアスみたいな話に繋がったり、投げっぱなしになっているゼノブレイドクロスのストーリーへのフォローがあるかなと思っていたら、そういうのも特になにも無かった。 でも、個人的にはこういうシリーズ作品には過去作のサービスよりも新作ならではの新しい体験に力を入れて欲しいと思っているので、この点は悪いとは思わなかった。過去作をプレイしている人に向けた要素とプレイしていない人への配慮のバランスが良いと思った。エンディングを除いて。

謎の新キャラクター、ケヴェスとアグヌスの女王

ゼノブレイド3には「ケヴェスの女王」「アグヌスの女王」という謎の新キャラクターが登場することが発売前から話題になっていた。この謎に包まれた正体不明の新キャラクターが、実はなんと「1」の仲間キャラクターのメリアと、同じく「2」の仲間であるニアだったという驚愕の事実が明らかになった!!! 両者は終盤メインストーリーに登場し、ラストバトルの最後の最後でゲストキャラクターとして戦闘にも参加する。伝説の技スターライト・ニーも例のボイス付きで繰り出してくれる。

メリアは「1」から皇族なので、女王という立場はぴったりハマっている。一方ニアはそういうキャラではないので女王っぽい貫禄のある振る舞いはしているけど違和感がある..."という設定になっている"。この振る舞いへの違和感の出し方がとてもかわいい。 「2」でのニアには正直そこまで強い印象を持ってなかったけど、「3」の活躍を見てお気に入りのキャラクターになった。もう1回「2」をやりたい。

メリアとニアはラスボスを倒してクリアセーブを作った後(たぶん)におまけ要素として正式にヒーロー加入するイベントが用意されている。とても強い。 そしてパーティに入れていると通常戦闘が専用のBGMに切り替えられるというオプションがある。なるほど「1」「2」のBGMに変わるのかー、と思っていたらなぜか専用の曲が書き下ろされている。クリア後のおまけにしては豪華すぎる。

悪役となる執政官・メビウスには魅力が少ない

敵である執政官(メビウス)は「人間たちに戦争させて、それを映画館で見て楽しんでいる」という、かなり癖の強い設定の悪役。主人公を監視している悪役というのはゼノブレイドに限らずJRPGにはよくある設定だけど、それが映画館という娯楽を象徴する場所というのがとても良い味を出していると思った。

メビウスは「人間の負の感情を切り取った存在」みたいな設定だと認識しているけど、これが設定上そうなるのかもしれないけどまあ小物ばかり。ゼノシリーズの悪役はなんらかの哲学を感じるキャラクターが多いけど、メビウスはぜんぜん魅力を感じなかった。 「2」のシンの最期も本編ではあまり共感できなかったけどDLCで印象が変わったので、「3」のメビウスもまだこれから補完されるという可能性はあると思う。

メビウスの人としての姿である執政官は、しょうもない悪役といった振る舞いがとても多い。主要人物である「軍務長」が中間管理職ばかりだと書いたけど、軍務長は全員有能というわけではないけどまあ兵士の中から選ばれているだけあって一定レベル以上はデキるという人が揃っている反面、その上司にあたる「執政官」がこんな人ばかりで、これはノア達の冒険が始まるまでよく組織が維持できていたなと思った。 メビウス・ゼットと会ったときに「何度目か」と強調して言うけど、ノア達の冒険の前にもこういう似たような事が歴史上何度もあって、その度にメビウス・ゼットの待つ映画館まで兵士がたどり着けるほどメビウス軍団は何度も何度も壊滅させられていて、その度にあたらしいメビウスを集めて組織を作り直して来たんだろうか。 ゼノブレイドシリーズの黒幕は色々と超越した存在だったりすることが多くて、メビウス・ゼットにも言動に達観したような印象があったけど、変な組織しか作れないのを放置してると思うと結構抜けてる。ラストバトルで突然駄々をこねだすなど、他のメビウスと同じで大した存在ではないのかもしれない。エセルの紋章が際どい位置にあったりするのもきっとメビウス・ゼットの趣味なんだろう。

そんな執政官軍団の中で、中盤から最終話にかけて宿敵となる執政官エヌは異彩を放っている。ノアと同じ姿を持っていて特別な感じがするし、冷酷な悪役らしい活躍を何度も見せてくれる。JRPGの宿敵としてピッタリはまっている。 特に第5話のメビウス・エヌの「おくりびとだろ。おくれよ」というセリフは、こんなひらがなばかりの柔らかい字面なのにとても絶望的なシーンで強烈に印象に残っている。その後のミオ入れ替わりを見ての発狂も含めて名シーン。 ただラスボス戦でエヌとエムが出てくるのは良いんだけど、勝手に突っ込んでとどめ刺しちゃうのはそこはノアたちに譲って欲しいなと思った。(ノアがエヌを止めるとも違和感を感じたけど、まあ主人公が宿敵に感情移入しちゃうのはゼノブレイドシリーズのお約束みたいなもので)個人的には、エヌとエムが合体して終の剣が真の姿になってそれをノアが振るう、みたいな展開を期待していた。

メビウスの中でも仲間として加入するキャプテン・トライデンは乱暴だけど元気なオヤジって感じで、「悪役を裏切って仲間に加入する」というバランスが求められる立場で良いキャラをしている。たとえ敵として対峙するストーリーだったり再度裏切ってメビウス側に付く話だったとしても、良い印象を持っていたと思う。 ただ彼がヒーローとして加入する固有のシステム「ソウルハック」はもうちょっと早めに解禁してほしいと思った。

Xenobladeというタイトルの頭文字を冠するメビウス・エックスは中盤から参戦し、強力な特殊能力を使ったり「他のメビウスと違う(ゼットと同じく"人間ではない")」と意味深なことを言われてもいたし何か重要なエピソードがあるのかなと思っていたら、最後のボス戦でムービーも何も無く雑魚モンスター扱いの退場をするのは意外だった。名実ともに小物だった。なら途中で意味深なことを言ったのは何だったんだ... ちなみにメビウス・エックスはメインストーリー中盤から登場して終盤に倒されてしまうけど、サブクエストにも登場シーンがある。これ攻略順番を変えるとどうなるんだろう。

メインキャラクター

ゼノブレイド3のメインキャラクターは6人全員が設定上強いのが良い。

「1」はシュルク、「2」はレックス(というかヒカリ)が設定上とても強くて見せ場が多い。逆にほかのキャラが見せ場を作ると違和感があったほどだった。「いや、それモナドとか天の聖杯でなんとかしろよ」となってしまう。 対して「3」は全員がインタリンクできて設定上も平等に強く、かつ「アタッカー」「ディフェンダー」「ヒーラー」の役割分けがストーリー上も踏襲されていて、「この人たちは1人が強いのではなく仲間と戦うことで力を発揮できるんですよ」という点が強調されている。 ノアだけが火時計を壊せる特殊能力あってちょっと優遇されているけど、過去作における未来視や因果律予測みたいな常に戦況を作るレベルの能力ではなく、ムービーとかの見せ場は全員に違和感無く用意されてるのが良かった。

バトルシステム上も、6人全員がインタリンクしてウロボロスになれるし、全員が最終的には全部のクラスになれる。 設定同様にバトルシステム上も6人全員が強くて、仲間と協力すると強くなるので、6人全員を活躍させてあげられる。 ゼノブレイドシリーズは「チェインアタック」「キズナ」「コンボ(崩し+転倒)」など仲間と協力して戦うことを大切にしたバトルシステムになっているけど、「3」は仲間の強さが平等なので協力の重要性がより強くなっている。 「1」「2」は主人公が強すぎて、特に主人公と役割が被るキャラクター(特に「2」のジーク)を活躍させづらかったので、その点「3」はみんなが平等に強いというのはとても良かった。

...と思っていた時期がありました。

ノア

第6話で手に入るノア専用タレントアーツ「アンリミテッドソード」これが強すぎる。序盤から使える「インフィニティブレイド」も結構強くてノアは若干優遇されていたけど、「アンリミテッドソード」はその比ではない。それまでのバトルシステムを否定するような強さを持っているぶっ壊れ性能。 これを入手してから、ノアだけアタッカーにしてディフェンダー1人ヒーラー5人みたいな構成でも十分な火力が出てしまうようになった。

この「アンリミテッドソード」は一時的にアーツが変わるという特殊なタレントアーツ。あとたぶん全部の攻撃に低確率即死が付く。(もしかしたら一部のアーツだけかも)

変化するアーツの中でも特にやばいのがBボタンの「タキオンスラッシュ」と、タレントアーツ中限定タレントアーツの「ファイナルラッキーセブン」。 タキオンスラッシュは9回?連続攻撃。融合無しでもヘイト獲得と正面特攻が同時に付いているので、アタッカーかディフェンダーであればこれ連発するだけでタレントアーツのゲージが溜められる。連続攻撃に確率で即死判定が付いてくるので、これ打ってるだけでもなんか急に勝つ時がある。 そしてアンリミテッドソード中にさらにタレントゲージ貯めると出せる最強技ファイナルラッキーセブン。敵全体にブレイク+ダウン+ライジング+スマッシュ+即死の追加効果を持つ連続攻撃の超大ダメージ技。連続攻撃の最後ではなんかオートアタックの数百倍くらいの異常なダメージが出る。チェインアタック並みの火力が一人で出せてしまう。さらに即死も付いている。 ゼノブレイドシリーズの「仲間で協力してコンボしたり必殺技を打とう」というバトルシステムを全否定して、1人で全部のコンボを決めて1人で大ダメージを出すという文句無しの最強アーツ。 「2」の本編終盤で一時的に加入するシンもちょっと似たような能力があったけど、あくまでイベント中の短期間だけだし、悪役なので仲間と連携とかしないでも強いというのは設定上も説得力がある。しかし「3」のノアは主人公だし、入手後はずっと使えてしまう。いいのか?

フラッシュフェンサーの開幕タレントアーツ80%スキルをつけて、側面特攻のグリッターストリーム+リムーブスラッシュを融合で打てば、一発でアンリミテッドソードが使えるようになる。あとはタキオンスラッシュとファイナルラッキーセブンを交互に打てばいい。特にラストダンジョンが長くて雑魚戦も多いけど、これでかなり快適に探索できた。 ボス戦など長期戦向けには、フルメタルジャガーの位置特攻アーツセット数増加スキルを付けて、アーツ連続使用10%のアクセサリ、味方のヒーラーでリキャストアップのバフを掛けるなど、位置特攻アーツを効率よく打てるようにしておく。ファイナルラッキーセブンを何度も打つとヘイトを集めすぎて死ぬのでヒーラーは多めにする必要がある。火力はノア1人で足りてしまうので他にアタッカーは要らない。ただアンリミテッドソード使ってない時に位置特攻を決めるためにディフェンダーは欲しい。

ノアの分身みたいな存在である悪役メビウス・エヌに自身との違いを聞かれて「孤独のお前と違って仲間に出会えたんだ」みたいなこと言った舌の根も乾かぬうちにインタリンクやチェインアタックという仲間との連携を無視して一人でボコボコにしてしまうノア。お前のやっていることはメビウスと同じなんよ。

総評

「ゼノブレイド3」は面白かった。ストーリーの冗長さやゼノシリーズらしくない哲学の薄さは気になる所もあるけど、欠点とするほどには感じなかった。完成度の高い上質なJRPGであることは間違いない。 特に「2」で個人的に苦手だったガチャ要素、チュートリアルの乏しさ、戦闘システムの複雑さ、お色気要素や下ネタなどなどがことごとく改善されていて良かった。「2」が好きだった人からすると好みは分かれるかもしれないけど。