先日、東京でやってたPUACL2025の観戦に行ってきた。面白かった。以前から配信を見ているINSOMNIAのObuyan選手を特に応援していたけど、優勝するとは思わなくて興奮した。
このゲームは観戦が面白い。
ポケモンユナイト大会観戦に至るまで
2022年のWinter Tournament FINAL
「このゲーム、観戦が面白そうだな」と初めて思ったのは、2022年3月のWinter Tournament FINALでの事だった。後のPUACL(アジアリーグ)に相当するこの大会の初回。当時は一般観覧なんていうものはなくて、都内某所で開かれていたらしい大会の配信をYouTubeで見るしかなかった。
そこで、Twitterで選手控室の映像が流れてきた。
オフライン会場の控室、銀河団のパチンコでありえん大盛り上がり!#銀河団win pic.twitter.com/NCqMhG4ysi
— ヨクガ@公式大会2連覇 (@yokuga89) March 5, 2022
このゲームって、大勢で観戦するとこんなに盛り上がるものなのか、って感じた。
すこし背景を説明すると、この大会は日本国内で開かれていて、日本のチームはオフライン参加だけど海外チームはオンラインという形だったと思う。コロナ禍で特に海外から渡航するのはハードルもある時期だった。決勝はAeos Fortis Regesというフィリピンのチーム1と、当時日本最強の銀河団というチーム。控室には敗退した日本チームのメンバーが残っていたようで、みんなで実質日本代表のような形の銀河団を応援する感じになっていたみたい。また、当時のこのポケモンユナイトというゲームは今とちょっと性質が違う「レモータスタジアム」で行われていて...簡単に言うと、今よりも実力差を覆して逆転をしやすいゲームだった。
この映像は、決勝戦のBO5で先に2本を取られて追い詰められた銀河団が、一か八かのサンダーラッシュを仕掛けて大逆転したシーン。このまま日本の銀河団は敗退してしまうのか、日本はMOBAで世界に通用しないのか、と思っていたところの逆転で盛り上がった。この映像を見て、自分もこんなふうにみんなで見ながら応援してみたい、って思った。勝負はここから銀河団が勢いをつけて3タテして優勝した。
話は逸れるけど、この銀河団というチームは毎回こんなサンダーラッシュを仕掛けているわけではなくて、むしろ予選では正々堂々ファイトして勝ちを取りに行く、当時としては珍しいチームだった。その予選では、銀河団のチームメンバーの1人だったザクレイ選手が、本業であるスマブラの篝火に出るため欠席。急遽その代打として予選のみ一時的に入っていたのが、当時フリーだったObuyan選手だった。予選の段階で「こんな面白い勝ち方をする選手がいるんだ」と思ってObuyan選手に興味を持って、普段の配信を見に行くようになった。それからObuyan選手はその年の大型公式大会に参加することはなく、翌年からはチームも変わったけど、気付けばObuyan選手をずっと応援し続けていた。
WCS2023
ポケモンユナイトを生で観戦するチャンスがやってきたのは翌年2023年。ポケモンの世界大会WCSが珍しく日本の横浜で行われることになった。WCSというのは9割ぐらいアメリカで行われていて、日本での開催は初だったので大チャンス。しかし会場の入場チケットは抽選制で、私も応募したけど入手できず、リアルで観戦することは叶わなかった。
大会会場近くのホールで行われていたパブリックビューイングには入れたけど、これが十分に面白い体験だった。日本代表のチームが1KO取るたびに歓声が起きる。ゴールを破壊すると拍手が起きる。それまで「ナイスゴール!」「その調子!」みたいなゲーム内の煽りボイスしか聞いたことが無かったので、みんなで見て応援するのがこんなに楽しいのか、と思った。
このWCS2023で日本代表チームは、3位と4位をおやすみマクロとMjkが占める好成績を残した。2位のOMO ABYSSINIANは、2022年のWinter Tournamentで銀河団と激闘を繰り広げたAeos Fortis Regesのメンバーが2人いるチーム2。そして1位は、2022年のWCSから2連覇となる世界最強チームLuminosityだった。応援していたObuyan選手はSecret Shipというチームで出場していたけど、Day1のグループステージで敗退してしまった。
PUACL2025
そして現代2025年。アジア大会PUACLが東京で行われることになった。このPUACLの予選がWinter Tournamentと位置づけられており、実質2022年のWinter Tournament FINALの後継イベントと言えると思う。
東京都庁前の三角広場という2,000人ぐらい入れる箱3で、入場無料で開催される。出場チームのほとんど(すべて?)はプロチーム。アジア大会だけど招待枠として世界最強チームのLuminosityも北米から招待されてくる。サイドイベントとして一般対戦会やピカチュウとのグリーティングもある。もはやポケモンユナイトの世界大会であり、お祭りでもあった。入場無料ということで、実際に入れるかどうかはよく分からなかったけど、観戦したいという夢が叶うかもしれないので、行くしかないということで行ってみた。
当日は朝早くから入場の行列ができており、朝9時頃に会場に付いたときはすでに1,000人以上の人がいて立ち見になっていた。564インチの巨大ディスプレイにゲーム画面が映し出されて、会場後方からでもよく見えた。初戦が応援しているINSOMNIAで、相手はWCS2024世界2位の強豪FN ESPORTS。後攻ラストピックだったObuyan選手が、タイレーツという競技シーンであまり見かけないポケモンをピックして見せて、会場はどよめきと歓声が上がった。多くの人が、画面に映っている誰もよく知らないポケモンであるタイレーツの写真を撮っていた。「(タイレーツの特性は)急所無効だから行ける!」と、どこかから叫び声も聞こえた気がした。とにかく、会場の2,000人がみんなタイレーツに釘付けになっていた。タイレーツがこんなに注目を浴びることある?
FINALS開幕戦の構成はこれだ!
— ポケモンユナイト公式 (@poke_unite_jp) March 29, 2025
■メインステージ配信https://t.co/bqSIGFHAeN pic.twitter.com/RBrYXQDupj
このピックに多くの人が衝撃を受けて、Twitterのトレンドにも入っていた。
タイレーツトレンドきたw #INSWIN #PUACL2025 pic.twitter.com/Nsr0SlHlDE
— s2terminal | suzuki.sh (@s2terminal_tech) March 29, 2025
この瞬間を会場で生で見れて、もう来て良かったと思った。まだ試合始まってないけど。
結果FN ESPORTSには負けてしまったけど、INSOMNIAはグループリーグを2位で通過してDay2に残った。昨年2024年のWCSは日本が制したこともあってかPUACL2025でも優遇されており、出場16チームのうち5チームが日本のチームだった。そのうちFENNELが敗退してしまったけど、INSOMNIAとIGZIST、ZETA DIVISION、名古屋OJAがDay 2に勝ち残った。実際には予定よりも3時間ぐらい遅れて進行して22時くらいまで続いて、かつ予定していた対戦が終わらなかったためZETA DIVISONの試合は翌朝に持ち越しとなった。私も12時間以上ずっと立ち見でいるのは無理で、途中で食事に行ったりホテルで休憩したりして凌いでいた。会場の熱気がすごくて、日本チームも多かったのでみんな応援したいという気持ちはあったけど、身体が持たなかった。
Day2。前日の反省を活かして、会場から目の前のホテルを取っているメリットを活かしてすぐに整理券を取得して、開場すぐに入場。先頭2列目の座席を確保した。この座席を確保できたのが大きくて、結局Day2は最初から最後まで会場で座って観戦できた。周りに座っているのも早朝から気合を入れてきているだけあって、各チームのファンが多かった様子だった。特にINSOMNIAのファンは紫色のユニフォームを身に着けている事が多く目立つため、同じファンであることが分かりやすかった。SNS等のファンコミュニティで名の通っている人が何人もいた模様で、一緒に来た妻は結構Twitterでポケモン関連の投稿をしているので声を掛けられている事もあった。私にはそういうのが特に無いので大人しくしていた。
Day 2は進行もスムーズで、試合展開も2-0のストレートで決まることが多かったため、あっという間にトーナメントが進んでいった。準決勝ではPUACL2023優勝のアジア最強Alter Ego、WCS2022・2023を2連覇した世界王者Luminosityのマッチで、特にAlter EgoのShingdiとLuminosityのOverlordはどちらも世界最強レベルのフィジカルを持つエースで、どちらもスピードタイプのポケモンを得意としていて、ドラフトピックでアブソルとゼラオラを互いに奪い合いながら正面衝突していて、もはやこれは世界大会決勝戦かという激闘を見せつつ、Alter Egoが勝ち上がった。もう一方ではPUACL2024を制覇しアジアトップに座していた日本のZETA DIVISONを破って決勝に上がったのが、応援しているINSOMNIAだった。
後で知ったことだけど、Obuyan選手はポケモンユナイトが始まる前の2021年、モバイルレジェンドで10second gaming frostというチームとして世界大会M2に参戦しており、Day1のグループリーグではAlter Egoに敗れ、Day2のトーナメントには勝ち上がったもののそこでもAlter Egoと勝負して敗退していた。4それから4年後、別のゲーム、別のチームとして、国際大会で立ちふさがったのがまたAlter Egoという、Obuyan選手の昔からのファンにとっては因縁の対決だったみたい。
決勝戦では有利なドラフトピックで安定した試合展開を見せるINSOMNIAだけど、普通勝てるはずのないファイトを勝ちに持っていくShingdi選手の攻撃も脅威で、何度もひっくり返されそうになったけどその度にINSOMNIAが押し返していった。追い詰められたAlter Egoが最後にレックウザラッシュでの逆転を仕掛けたが、INSOMNIAはラストヒットの豪運でこれを返し、優勝を決めた。会場では鳴り止まない歓声と、選手の名前を讃える叫び声が聞こえた。YouTubeを自宅で寝っ転がりながら眺めてるのとはまったく違う体験だった。とにかくPUACL2025は楽しかった。
ポケモンユナイトは観戦が面白い
このゲームは観戦が面白くなるような工夫が随所に感じられ、他のポケモンタイトルと比べて明確に「競技シーンで魅せる」ことを重視しているように思われる。
ポケモンを動かせる
まず当たり前すぎるけど、このゲームはポケモンを動かせる。ポケモンのゲームは数ある中で、「ポケモンを自由に操作して動かせる」というゲームは実は多くはない。「本編」である『ポケットモンスタースカーレット・バイオレット』に代表されるように、だいたいのポケモンゲームで主人公はポケモントレーナーであって、ポケモンはランダムエンカウントするモブであったり、トレーナーの指示に従って行動する仲間である。
一方ポケモンユナイトも一応、設定上はトレーナーが指示しているということにはなっているが、ポケモン自体を上下左右自由に動かして、好きな時にわざを打てる。緻密な操作とか技を出すタイミングとかがすべてバトルに反映され、勝敗に関わってくる。そういうポケモンのゲームって珍しいので、戦略とかフィジカルがどうのこうのの前に、まず ポケモンが動いているのを見るだけでも楽しめる という大きな特徴がある。
登場するポケモンのチョイスも独特であり、年々増えていて現時点で最終進化形のみで70種類を超えている。ピカチュウやリザードンのような人気ポケモン、マスカーニャやザシアンのような比較的新しいポケモンをきっちり抑えつつ、ドードリオやタイレーツ、オーロットのような謎のチョイスも色々ある。しかもドードリオなら点数を3つに分けて入れられる、タイレーツなら当たり判定が6個あり攻撃の的になりやすいなど、それぞれのポケモンの特徴をしっかりゲームに落とし込んで実装されている。ポケモン自体は本来1,000種類以上いるので「好きなポケモンが登場していない」という不満もまだまだ多いと思うけど、70種類のポケモンを自由に操作して競技できるというのは、それだけでも面白いと思う。
バトルが派手
ポケモンユナイトの開発スタッフの一部は、過去にポケモンの対戦格闘ゲーム「ポッ拳」に携わっていたようで、実際に登場ポケモンもポッ拳との重複が一部あり、多かれ少なかれ影響を受けているようである。そんなわけで格ゲーにルーツがあるためか、とにかく激しい技の出し合いが多い。技ひとつひとつが強力で、エフェクトも派手な物が多く、見ていて楽しい。
アニメのポケモンを見ていた人なら、サトシの「避けろピカチュウ!」という指示に夢を見たことはあると思うけど、それが本当にできるのがこのゲーム。間一髪の駆け引きで相手の技を避けたり、別の技で無効化したりして、相手のリソースを割かせたその隙に反撃に転じる、みたいなアクションバトルが展開される。派手なので分かりやすく、見ていて楽しい。
ポケモンユナイトはジャンルとしてはMOBAに分類されるけど、League of Legendsのような他MOBAに多い緻密な戦略とかプレイ中の買い物のようなビルド要素はポケモンユナイトでは薄くなっている。そのぶん技の出し合いによる格ゲーのようなバトルの比重が比較的大きくなっていて、視覚的に楽しめることが重視されているように感じる。これは、本編のポケモンがターン制バトルによる熟考を重ねた動きの読み合いや緻密なパラメータ調整によって勝敗が決まるのに比べると対照的だと思う。
目が離せない試合構成
ポケモンユナイトの試合は10分の制限時間があり、より多くのスコアを稼いだチームが勝利というルールになっている。かならず10分で終わるのでテンポが良い。1試合の時間が短くマップも小さめなためか、そのぶん序盤から相手の陣地を荒らしたり上下のレーンを移動して切り替えたりと選択肢が色々あって、同じような展開になりにくく飽きにくい。
また、逆転要素が多く一方的な展開になりにくい。その最たる物が残り2分で登場するオブジェクト、レックウザ戦であり、ここでラストヒットを取った方のチームに強力なバフが掛かってたくさんスコアを獲得しやすくなる。非常に重要なので、レックウザが登場する前からポジションやレベルを上げて準備して、残り2分になったら5対5の集団戦が起きる。特に、不利なチームはここで何かアクションを起こせば逆転を仕掛けられるチャンスなので、かならず何か起きる。集団戦以外にも、睨み合っている隙にファイトをせずスコアを稼ぐことで点数関係を逆転させて相手からのアクションを誘うみたいな戦術とか、集団戦で勝ち目が薄いなら対戦相手を無視してレックウザにラッシュを仕掛けて実力差を覆そうとする手とかもあるけど、とにかく残り2分で何かが起きる。このタイミングが分かりやすく、逆転のようなドラマチックな展開を生みやすいので注目しやすい。
このような点もあって、このゲームは見ていて分かりやすく楽しい要素がたくさんある。実際にPUACL2025を観戦していても観客の客層は老若男女さまざまで、このゲームの観戦がたくさんの人に楽しまれていることが感じられた。
ポケモンユナイトの未来
ここまでこのゲームを絶賛してきて完全無欠の究極のゲームかのように話してきたけど、実は全くそんなことはない。たとえば観客の客層は多様性がある反面、プレイヤーは10代~20代の男性に極端に偏っている点からも、このゲームの伸び代が感じられる。このゲームは実際にプレイしてみるとまったく上手くいかなくてストレスを感じることも多いし、上達するためには私生活の多くの時間をこのゲームに割き続けないとなかなかうまくならない。また先に述べた「ポケモンユナイトは逆転要素が多い」というのは実力差が覆りやすいということでもあり、競技性を犠牲にしている一面も無くはない。
ポケモンユナイトというゲームがビジネス的にもうまく行っているのかはよく分からない。他のMOBAと同じくFree to winであり、主にスキンなどで売上を立てているものとは思われるが、価格設定など色々迷走しているようにも感じられる。ポケモンの他のタイトルに比べても売上が特別に大きいわけではないと推測されている5。ポケモンといえばグッズ展開も幅広く手掛けているが、ポケモンユナイトの公式グッズは市販されている物はほぼ無く、イベントの景品として少数が配布されているだけになっている。このゲームが長く運営を続けるには一定の収益が必要だろうと想像されるので、もうちょっと景気の良いニュースを聞きたいところ。
私としては、このゲームがちゃんと長く続いて欲しい。ここまで述べた通り、観戦することにすごく面白みがあるタイトルであり、他のポケモンゲームと比べても、他のMOBAやe-sportsタイトルと比べても、独自の強みがあると思う。そのためには、ちゃんとこのゲームで稼いで欲しい。これだけ大きい大会を開いて、これだけの人を集めて盛り上げられるタイトルなので、可能性は色々あると思っている。
-
Pokémon UNITE Winter Tournament FINAL 観戦ガイド|水上侑/ふーひ https://note.com/f_n5/n/nbbcdd233bb26 ↩
-
ポケモンWCS2023「ポケモンユナイト部門」出場チーム紹介-前編-|水上侑/ふーひ https://note.com/f_n5/n/n49388ee6c642 ↩
-
西新宿の全天候型イベント会場|新宿住友ビル三角広場 https://office-b.sumitomo-rd.co.jp/sankakuhiroba/ ↩
-
世界が熱狂したM2を振り返る|モバイルレジェンド速報 https://www.mobilelegends-sokuho.com/entry/m2_record ↩
-
「ポケポケ」の推定売上は2億ドル超 すでに『Pokémon Sleep』や『Pokémon UNITE』を上回る勢い https://jp.ign.com/pokemon-trading-card-game-pocket/77561/news/2-pokmon-sleeppokmon-unite ↩